習慣スタッキング(ハビットスタッキング)は、たった一文で言えます。「[今の習慣]をしたら、[新しい習慣]をする」。すでにある習慣がリマインダーの役を果たすので、新しい習慣は、ちょうどいいタイミングで思い出せるかどうかに左右されません。
これが効くのは、新しい習慣で難しいのは実行そのものではないからです。2分間のストレッチは難しくありません。難しいのは、行動できる余裕のあるときに、きっかけが確実にやってくることです。時刻はきっかけとして不向きです。毎日無意識にやっていることは、とても良いきっかけになります。
アラームよりアンカーが強い理由
アラームは作業を中断させます。スマホの都合で、たいてい何かの最中に鳴るので、つい止めてしまい、2週間もすると身についたのは「止める」という習慣になっています。(この失敗と、リマインダーに代わるものについては 通知なしで習慣を記録する方法で詳しく書いています。)
アンカーは中断しません。すでに一連の流れの一部だからです。コーヒーを飲み終えた、手が空いた、次はあの習慣。迷うことも、自分と交渉することも、スマホも要りません。
仕組みは地味で確実です。ひとつの習慣が終わることが、次の習慣のきっかけになります。シャワーのあとに、リストを見なくても歯を磨くのと同じです。
よいアンカーの条件
条件は4つで、候補はすべてを満たす必要があります。
すでに自動化されている。 考えずにやっていること。アンカー自体を思い出す必要があるなら、覚えておくことが2つに増えただけです。
毎日確実に起きる、または習慣をやりたい日に確実に起きること。平日だけのアンカーを毎日やる習慣につなぐと、週末は休むことを自分に教えてしまいます。
期間ではなく、完了する動作であること。 「寝る前」は、就寝時刻が自分で気づける出来事ではないのでうまくいきません。「スマホを充電器につないだら」は、はっきりした動作なのでうまくいきます。「朝に」より「コーヒーを注いだら」のほうが良いのも同じ理由です。
ふさわしい場所であること。 アンカーが終わる場所で、新しい習慣を始められる必要があります。「駐車したら腕立て伏せを10回する」は、やる気ではなく場所の問題で失敗します。
実際によく使われる、確実なアンカーはこのようなものです。歯磨き、朝の最初のコーヒー、デスクに座る、ノートPCを閉じる、スマホを充電器につなぐ、玄関を入る、夕食を終える、お湯を沸かし始める。
新しい習慣は、続けられるくらい小さくする
ルールは、新しい習慣をアンカーより短くすることです。
「コーヒーを淹れたら45分トレーニング」と積んで失敗するのは、トレーニングがきついからではありません。コーヒーを淹れたあとの空きが4分しかなく、始める前からそれがわかっているからです。その結果、このスタックは毎朝「やめる」という判断を求めてきます。それが毎日少しずつ、意欲を削っていきます。
2分というのは標準的な最初のサイズで、見破るべき小細工ではありません。2分間のギターは、コーヒー → ギターという流れの本物の1回であり、育てているのはその流れです。大きくするのは後からで簡単です。きっかけが来るかどうかが、うまくいくか否かの分かれ目です。
スタックをきちんと書き出す
あいまいな意気込みは、ごく普通の火曜日にもたないものです。4つの欄をすべて埋めた一文にして書きます。
1日の終わりにノートPCを閉じたら、デスクで、2分間、明日の3つのタスクを書く。
アンカー、行動、場所、長さ。この具体性が実際に効いています。この形で立てた実行意図は、「一日の計画を立てるようにしよう」という言い方に比べて、研究でも大きく上回っています。理由は地味で、その場で決めることが何も残らないからです。
アンカーひとつにつき習慣はひとつ
2週間うまくいくと、同じアンカーに2つ目、3つ目の習慣をぶら下げたくなります。でもそれでできあがるのは、5つの手順が全体でひとまとまりに崩れる朝のルーティンです。慌ただしい日に2番目を飛ばすと、3番目から5番目もまとめて消えます。
習慣を増やすなら、新しいアンカーにつないでください。1日には、作りたい習慣の数より多くの自動的な行動があります。
知っておきたい例外が2つあります。連鎖は、習慣が本当にひとつの活動であれば問題ありません(ランニングシューズを履く → 走る → ストレッチは、3つではなく1つのことです)。また、何か月も続けているアンカーへの2つ目の習慣は、最初の習慣が本当に自動化されたあとなら、許容できるリスクです。
習慣だけでなくスタックを記録する
記録するなら、失敗の原因を診断できる形にしましょう。スタックが崩れたときの問いは、いつも同じです。アンカーは起きたか。
- アンカーは起きたが習慣はしなかった → 習慣が大きすぎるか、アンカーのあとの空きが短すぎます。小さくします。
- アンカーが起きなかった → アンカーは思っていたほど確実ではありませんでした。別のものを探します。
どちらかで対処が変わります。どちらかがわからないと、問題のなかった習慣を小さくしてしまいがちです。
実践的なやり方は、習慣の名前にアンカーを入れることです。「ストレッチ」だけでは調子の悪い週に何もわかりませんが、「コーヒーのあとにストレッチ」なら、どの輪が切れたのかがはっきりします。
習慣にアンカーの名前をつけると、30日のグリッドでどの輪が切れているかが見えます。3つの習慣、毎日のスケジュール、連続記録は無料で、チェックインはいつでもCSVに書き出してじっくり確認できます。
できることアンカーがなくなったとき
どのスタックにも前提があり、いつかそれが失われます。転職して通勤がなくなる、旅行に出る、オフィスが閉まる、コーヒーをやめる。
「何か月も順調だった」習慣が終わる最も多い原因がこれです。内側からは、やる気の問題に見えるので、的外れな対策を探してしまいます。
対応は2つあります。
- 意識して付け替える。 変化のあとも残るものにつなぎ直します。旅行は場所に結びついたアンカーを壊すので、持ち運べるものにつなぎます。スマホの充電器、最初の食事、ホテルの部屋のノートPCなど。
- 大事な習慣には予備のアンカーを用意する。 事前に決めておきます。「オフィスに行かない日は、朝食のあとにやる」。書くのに10秒、それが乱れた2週間を乗り切る支えになります。
スタッキングで解決しないこと
習慣を確実に始めさせることはできます。ただ、どうしてもやりたくない習慣はどうにもなりません。10回続けて気が重いなら、どんなきっかけも持ちません。その場合の正直な答えは、きっかけではなく習慣のほうを変えることです。また、時間を生み出すこともできません。1日のどこにも4分がないなら、問題はスタックではなくスケジュールです。